お前は池のスクリーンで紫衣に逢うんじゃないのか。


なんで実体化してるんだよ。


池の中央に浮かぶように立つ三成の姿。


俺に向き合う紫衣にはまだ彼の姿は目に映っていない。



それにしても相変わらず、いい男じゃねぇか...。


クソッ!!


それでも紫衣は渡さないからな!!



「石野さん...。」



不安そうな紫衣。


そんな不安そうな顔するなよ。


俺だって怖いよ。


今も恐怖と戦っている。




紫衣の肩に両手をおいて振り向かせようとする俺に水面の上に立つ三成は何か言いたそうに池を指差した。



もしかしたら池が今もスクリーンになっているのか?


心の中の俺の声に反応するようにして三成は頷いた。





「見てみ?」


硬くなった紫衣の体を抱き寄せて池の側まで連れて行く。



「ここにいる。」


水面を指差して言葉を落とした。



「嘘.....。」



池の淵で膝を突いた姿勢で中を覗きこんだ紫衣が言葉を零した。

そして同時に涙がポロポロと池に落ちていった。