「おれやっぱ旅行行けねぇわ…。」


真衣に電話したのは免許取得した日の夜。



これ以上紫衣を傷つけたくない。


だけど本音は俺が揺れたくなかった。


俺自身が逃げたかったんだ。



「良君が好きなの。」


「………。」


「良君と一緒にいたいの。」


「俺はもう苦しい…。」


「アタシを見てるからでしょ?アタシを好きになってくれたからでしょ?」


「………。」


「今のままじゃ苦しいよ。アタシだって苦しいんだから!」






電話越しでもわかる真衣の涙。


ハッキリしない俺が傷つけてしまった真衣。


紫衣の笑顔を守るために苦しめているのは真衣。


強気な真衣の涙は俺の心をグラグラと揺らし続けた。



「良君と紫衣の別れを望んだ訳じゃないの。
だけど…だけどね。
今は良君が紫衣よりアタシを見てるのがわかるから…
わかるから、もう我慢できないよ!
良君が欲しいの!!」