彼女の震える体をギュッと抱きしめてから解放した。
さっきまで彼女の体温を感じていた俺の体がその寒さに寂しさが込み上げる。
「見せたいものがあるんだ。」
彼女の手を掴んで歩き出す。
彼女は俺に促されるままに俺と歩き出す。
「行こう。」
彼女にそっと呟いた。
行こう、三成の待つあの池に...。
だけどもう恐れない。
だってそうだろ?
紫衣の手は俺に繋がれているんだよな?
俺は紫衣を信じてる。
奥に進むにつれ生い茂る木で視界が悪くなる。
電灯の灯りも木に阻まれて届かない場所。
「もう少しだから足元気をつけて。」
手を引きながら彼女の足元にも気を配る。
今日は新月。
空からの月の光も弱いんだ。
だけどその方がいいのかもしれない。
光がないほうがいいのかもしれない。
あの池はスクリーンのように別の世界を映してくれる。
だから月が池に映りこむよりは新月のように月の光が弱いほうがよく見えるのかもしれない。
関係ないのかもしれないが、そのときはそう思ったんだ。


