そして俺は自分の生まれたときの話を彼女に話した。
医者も諦めた俺の命。
奇跡によって吹き返した息。
「親父の奴さ、何度も言うんだよ。奇跡だって。
その言葉を聞くたび重くて俺は逃げてたんだ。」
奇跡の子供。
その言葉がずっと縛り付けていた、そう言った俺の手に紫衣の小さな手が重ねられた。
「前に佐和山で話しただろ?よく来るって。
俺はあの場所に行くと三成に逢えるような気がするんだ。」
「お兄ちゃんに?」
「そうだ、夢の中で俺は三成と話した。
ずっと悔やんでいたんだ、悔やんで悔やんで苦しそうな三成を見て俺も苦しかった。
俺も生まれたことを悔やんでいたから...。」
「生まれたことを悔やむなんて悲しいこと言わないで。」
紫衣、泣いているのか?
腕に落ちてくる紫の涙。
俺の為に、そして三成の為に流してくれる優しい涙
「紫衣の涙はあたたかいな...。」
彼女の涙から伝わる優しい温度。
その温度を感じて俺も瞳がゆらゆらと揺れた。
ギュッと締め付けられるように胸が痛んだんだ。
「こんな話信じられるか?」
「信じられるよ。あなただって私の話、信じてくれたでしょう?
あなたは...どうして私を信じてくれたの?」
「理由なんてない、紫衣だから信じられた。」
「だったら私も同じ、あなただから、佐和さんだから信じられる。」
言い切る紫衣。
なぁ、三成。
お前よくこんないい女の手を放すことが出来たよな。
俺はやっぱり放せそうにない。
俺は紫衣とずっと繋がっていたいよ。
男と女として.....。


