恥ずかしさからか俺の膝の上から立ち上がろうとして動く紫衣を抱きしめたまま彼女の首筋に唇を寄せた。
甘い紫衣の香り。
香水ではない、紫衣の香り。
俺はそのまま彼女の首筋に顔を埋めたまま彼女に話しかけた。
「そのまま、このままで聞いて欲しいことがあるんだ。」
ピクリと肩を揺らした後、紫衣はギュッと体に力を入れている。
俺は彼女のぬくもりを感じて閉じていた瞳を開いた。
「石野さん?」
「佐和だろ。」
「.....。」
話があるといってから一向に口を開かない俺に紫衣の声が掛けられる。
だけど...
どうしても名前で呼ぶことができないんだな。
それにまだ俺の口が動いてくれないんだ。
だからもう少し待ってくれ。
誤魔化すように名前を訂正すると紫衣は黙ってしまった。
呆れているのか?
でも、もう少し時間が欲しい。
もう少しでいい。
紫衣を感じたいんだ。
「佐和って呼んで...。」
もう一度促すように彼女に話しかけた。
「佐和さん...どうかしたんですか?」
「どうもしない..ただ、」
時間つぶし...。
卑怯かもしれない、でも怖いんだ。
だから俺は確かめるように言葉を落とした。
「なぁ、紫衣。
...........今でも三成が好きか?」
三成のところに行きたいか?
俺じゃなく三成と一緒に生きたいのか?
こんなに自分が女々しいとは思わなかった。
紫衣はこんな俺をどう思う?
情けないよな..俺。


