一階についたエレベーター。
エントランスを抜けると紫衣の手を取ってマンションの外に出た。
「買い物に行かないか?」
「買い物ですか?」
「そう、夕食を一緒に作らないか?」
「一緒にですかッ??」
何も用意していないんだ。
ただ部屋にいたくなかっただけで出てきたんだ。
だから買い物なんて時間つぶしになるようなことを提案してしまった。
だけど紫衣は顔を真っ青にして固まっている。
きっと料理が出来ないからと焦っているんだろう。
食べつけない料理、急にこの時代の食事を作れるはずはない。
この時代で育っても今は料理ができない女がわんさかいる。
「紫衣、料理出来ないんだろ?」
からかうように言葉を掛けると紫衣は真っ青だった顔を今度は真っ赤に染めて口を開いた。
「出来るよ!出来るもんッ!」
間髪入れずに言葉を返してくる紫衣。
だけど、その後彼女は俯いて考え込んでしまった。
彼女の一喜一憂が、全てが愛おしい。
俺は紫衣の頭をクシャクシャと撫で回して声を立てて笑った。
「ごめんな。嘘だよ。」
「わかってて…酷いですよ。」
涙ぐんで答える紫衣の耳元に触れさせてから囁くように言葉を掛けた。
「紫衣が可愛いから苛めたくなるんだ。」
俺の言葉に首を傾げた後頬を染めて俯いてしまった紫衣。
きっと言葉の意味を理解していないんだろうな。
だけど俯いているってことは可愛いって言葉に反応したに違いない。
可愛すぎるだろ?
手放せるわけない。
なぁ、三成....。
俺は紫衣と離れるなんて出来ないよ。


