今、俺の側には彼女の変わりにこの時代に渡ってきた紫衣がいる。
魂が入れ替わったって言ったほうがわかりやすいかもしれない。
420年の昔から現代に渡って来た紫衣。
一目惚れだった。
不思議なくらい彼女に惹かれたんだ。
そして彼女も俺を求めてくれる。
俺の熱に応えてくれるんだ。
そんな彼女との幸せな時間に起こったのは不思議な現象だった。
恥ずかしそうに伏せた瞼を持ち上げた彼女の瞳を覗き込んだ俺は彼女の瞳の中に三成の姿を見た。
部屋の中は甘い雰囲気に包まれていた。
いっそこのまま紫衣を自分のものにしてしまおうかと欲望と理性との戦いを繰り広げる俺の心を知らない純粋な紫衣。
触れるだけのキスではもう物足りない。
紫衣の全てを奪いたいと思っていた。
それなのに俺の耳の奥で響くのは三成の声。
佐和山でいつか聞いた彼の声だった。
瞳に映されるのは俺のお気に入りの場所の公園だった。
手入れの行き届いていない荒れた公園。
公園の奥に行けば行くほど木がうっそうと茂り人の気配がなくなる。
一人になりたいときに行く場所。
公園の一番奥にある大きな池が映っていた。
そこに来いと言うのか?
その池に紫衣と一緒に来いと?


