気分は最高だった。


可愛い紫衣の喜ぶ顔


念願だった免許の取得







浮かれてたんだ。


浮かれすぎてたんだ。




「卒業旅行は車出せるようにオヤジに交渉するし…
練習もちゃんとしなくちゃな。」



紫衣には話していなかった。


真衣の強引な誘いを断りきれなかった卒業旅行への参加。



背中に冷たい汗が伝った。



戸惑いながらも嬉しそうに微笑む紫衣。


焦る俺は勝手に動く唇を止めることは出来なかった。



「かなり距離があるからシッカリ運転しなきゃな。
運転で疲れて俺は遊ぶどころじゃねーよ。
新幹線乗ったら楽だけど金かかりすぎるよな。」



真衣との会話。

紫衣の知らない話。



後悔しても言葉を戻すことは出来ない。



戸惑う紫衣の表情を見て俺はズキズキと胸が痛んだ。



戸惑いながらも俺の話を聞こうとする紫衣の姿勢は崩れない。


問いつめてくれればいい。


芽衣のように最低だとなじってくれたら良かったんだ。



「人数考えるとやっぱオヤジにワゴン車借りなきゃ乗れねぇよな。」



言葉を出す度胸がズキズキと痛んだ。


なのに焦れば焦るほど俺は真衣との話を口にしてしまっていたんだ。