彼を感じてからは俺は歴史を知りたいと思うようになった。
知れば知るほど書かれていることに矛盾を感じた。
授業で三成が出てくるのは関が原の合戦のみで、俺の知りたい話は何も出てこない。
探したいんだ。
俺はお前を...
お前の歩いた道を俺も探してみたい。
図書館で三成に書かれている文献をたくさん目にした俺は驚いた。
敗者に残されるのは捻じ曲げられた歴史。
本を読むたびに悔しさに唇を噛み締めた。
「どうして三成は悪者に書かれちゃうんだろうね。」
図書館から出てすぐの公園のベンチで座って缶コーヒーを飲んでいる俺の耳に入ってくる言葉。
隣のベンチに腰掛けている高校生のカップル、その女の子の声だった。
「仕方ないだろう?嫌われてるんじゃねぇの?」
「みんなわかってないんだよ!本当はとっても優しい人だってわかってない人が書いてるんだよ!!失礼しちゃう!!」
興奮した女の子を彼氏だろう、男はあしらうような言葉を彼女に返している。
珍しいな...。
俺と同じ考えの女がいたのか。
その事が俺の心を和らげてくれた。
日差しのあたたかい公園でのひと時、心まであたたたかくなったのを覚えている。
すっかり忘れていた記憶。
あれって紫衣だったんだな。
きっと三成の側に、420年前の時代に渡った紫衣。
本当の三成を心で感じることの出来る優しい紫衣。
どんな風に生きているんだろう。
三成と共にどんな道を歩いているのだろう。


