「父さんはそうは思わない。形を残すばかりが大切じゃないんだ。
その志、生き様を残したものが本当の勝者だと思っているよ。三成は負けた。
でも彼の生き様を父さんは心から尊敬している。
戦の勝敗は時の運だ。勝つことだけが何かを残せるということではない。
負けてもなお語り継がれることこそが大切なんだと信じている。」
そのときの俺には父さんの言葉の意味がわからなかった。
負けは負け。
負けると全てを失ってしまう。
それが全てだという考えを曲げることは出来なかった。
佐和山を訪れてから俺は何度も夢を見た。
苦悩する男。
どうして止められなかったのかと、どうしてこんなことになってしまったのだと後悔し続ける男の姿。
苦しくなった。
悲しくなった。
俺もいつも後悔してばかりだから、その男の心が俺に流れ込んでくる。
俺を同じ思いを抱える男。
そんな男の姿に自分を重ねて切なくなった。
「何をそんなに悔やんでいるんだ?」
夢の中で男に話しかけた。
その男は俺をニヤリと見て答えたんだ。
「それはお前が一番よく知っていることだ。」
意味がわからない。
呆れた表情の俺にその男は追い討ちを掛けるように言ったんだ。
「気付いた時には全て終わっているのだよ。」
男の言葉の意味は俺にはわからなかった。
そのときの俺には理解できなかったんだ。


