芽衣から電話があった次の日、俺は念願の免許を取得した。
「良君、免許合格おめでとう!」
「サンキュー紫衣。
オヤジの車借りてドライブ行こうな。」
試験場を出ると紫衣が俺を待っていてくれた。
学校サボって来てくれたのか?
紫衣のことだ、かなり待っていたに違いない。
試験場の中で待てばいいのに…
でもこれもさりげない紫衣の優しさ。
もしも不合格なら紫衣はきっと俺には逢わずに帰っていただろう。
合格者は発表から交付を受けるまで時間がかかる。
不合格の人間より帰りが遅くなるんだ。
きっとその時間差で紫衣は判断したに違いない。
「だけど、どうして合格だってわかったんだ?」
一瞬だけ小さく揺れた肩
「そんなの決まってるよ。良君が落ちるわけないって思ってたからだよ。」
優しい紫衣の優しい嘘。
俺は紫衣の頭を乱暴に撫でた。
サラサラの髪が指を滑る感覚が好きなんだ。
紫衣を愛おしいと思う気持ちは変わってない。
可愛くてしかたない。
その気持ちも何も変わってないんだ。


