それから幾日かが過ぎて左近様が水口に出立する日が来た。



このお屋敷でお二人を見ていると奥方様の言った言葉がなんとなくだけど理解できたような気がする。



とても奥方様を大切にしている左近様。


そんな左近様に時には甘え、そして時には支えになっている奥方様。




私が奥方様を超える事はない。


だからかもしれない。


それがわかったからかもしれない。



出立の前の日、奥方様に左近様についていくように言われた時あっさりと承諾できた。



「ありがとう、朱里ちゃん。これで安心できます。」



「いいえ、でも左近様とその..男と女にはなりません。」



キッパリと言い切る私にクスクスと笑いながら奥方様は言ったんだ。



「いいえ、きっとあなた方は惹かれあうわ。そうなれば左近様が渡り歩くこともなくなりますね。たくさんの華に囲まれることもなくなりますよ。」



「.....。」










「では言ってくる。何かあったらすぐに連絡を...。」


「お世話になりました。」




「気をつけて。」



私は奥方様に見送られて左近様と馬に乗って水口に向かった。