「悪ィ、紫衣からだと思うから切るぞ。」


「いやだ!後でかけ直せばいいじゃない。
それより卒業旅行の時、石田の運転楽しみにしてるんだよ。」


「それもまだ紫衣には話してないんだ。
それに、俺はまだ行くって決めた訳じゃない。」


「紫衣だって喜ぶに決まってるよ。
大好きな良君が旅行に参加してくれるなんて、嬉しくないわけないでしょ?」


「ごめん、またキャッチが入ったからもう切るぞ。」



苦しかった。


自分では止めることが出来ない気持ちの傾きを感じていた。


守りたいと思うのに、俺はきっと紫衣を傷つけてしまう。


真衣のペースにのまれながら、俺は自分で自分が怖かった。


最近俺に紫衣から電話をしてこなくなったのも真衣と電話中にキャッチを取らなくなったからだろう。


次の日、謝っても紫衣は笑って言うんだ。


『たいした話じゃなかったから…。』


ぎこちない笑顔、大丈夫だと無理をしているのもわかっている。




それなのに俺は真衣からの電話を楽しみにしてしまうんだ。


真衣の強さに惹かれるんだ。