「朱里ちゃん、独りで生きていくことは並大抵ではないわ、たとえあなたが特殊な技術を身につけた忍でも..。」
「悪いとは思ったが話しを聞いてお前の里を見てきた。」
「里へ....。」
里へ行ったというの?
里を知っているの?
「そんなはずはありません。里は誰にもわからないようにしてきた。もともと人里から離れた場所にあったんだ、わかるはずがない。」
「知っていたのだよ、俺は里の人間とつき合いがあった。」
「嘘よ!信じられない。」
両手で耳を塞いで首を振る私の頭の上にのるのは左近様の大きな手。
左近様はその手で私の頭を撫でつける。
「嘘ではない。お前の大切な春牙、あれは俺と交流を持っていた。」
「春牙が...?」
「そうだ、父上の薬草取りに出かけた俺に話しかけてきたのは春牙の方だった。
お前のことを頼まれたのだ。」
「どういうこと?」
「春牙は里に裏切り者がいると気付いていた。お前の父上は春牙の言うことをまともに聞き入れなかったのだ。自分一人では里もお前も守れないと俺に相談してきた。
そして、頼まれたのだ。お前が生きて里をおりる事ができたらお前の力になってくれるようにと彼に約束させられた。」
春牙が...。
里の場所、存在を明かしてはいけない、その掟を破ってまで交流を持ったのは左近様。
そして、それは私のため.....。


