おかゆを乗せた盆を持って彼女の近くに腰を下ろす左近様。
「あの...私が...」
手を出そうとする私を左近様が手で制止する。
「これは俺の役目だ、お前は父上に体を見てもらってこい。」
「でも...。」
「父上のところから戻ってからお前には手伝ってもらいたいことがある、早く行け。」
厳しい左近様の口調に私は素直に従った。
奥方様の父、北庵法印様に体を見てもらってもう大丈夫だといわれた。
小さいとはいえ切りつけられたとわかる傷をたくさんつけた体。
そんな私に何も言わずに親切にしてくれる人達に感謝の気持ちで一杯だった。
「ありがとうございます。あの、奥方様はどこか悪いところがあるのですか?」
「あぁ。あの子は生まれつき体が弱かった。左近殿にもずっと苦労をかけておる。そんな娘でも大事にしてくれる左近殿には感謝しても感謝しきれんよ。」
詳しいことはわからないけど奥方様は体が弱く、よくふせっていることが多いとわかった。
彼女に、この家に恩返しするために私に出来ることは彼女の身の回りの世話だろう。
左近様の言うのお手伝いは彼女のお世話をすることなのだろうか...。
考えながら廊下を進むと奥方様の部屋の前に着いていた。
「朱里です、只今戻ってまいりました。」
「入れ。」


