「あの、おはようございます。」
朝の支度をするのは女の仕事、少しでも恩返しがしたくて台所に向かった。
「おはよう、もう体はいいのか?」
でも台所で仕事をしていたのは昨日の女の人ではなく左近と名乗った彼女の夫だった。
「はい、ありがとうございました。何か私にもさせてください。」
「それならば、妻の手伝いを頼む。」
彼女のいる部屋の場所を聞いて廊下を歩いていく。
襖の前で声をかけると中から彼女の声で返事が聞こえた。
「失礼します。」
部屋に入ると彼女はまだ床にふせっている。
具合が悪いの?
「どうされたんですか?どこかお加減が悪いのですか?」
慌てて彼女の近くに駆け寄る私の背後から左近様の声が聞こえた。
「妻は体が弱くてな、起きられるほうが少ないのだ。」
儚くて消えてしまいそうな印象の左近様の妻。
「いつもごめんなさい。朱里ちゃんもごめんなさいね。」
「いえ、...。」
「気にするな。それよりおかゆを作ってきたぞ。食べて元気になれ。」
妻の手伝いといった左近様
私は彼女の何を手伝えばいいの?


