男は、同じ目線に合わせてしゃがみ込んだ青年から目を逸らした。それでも感じる視線に戸惑い、思わずぴたりと合わせた目が何故だか外せなくなった。
「組織の名を教えてもらえないか」
威圧的でもなく、静かに問いかける。
睨まれている訳でもないのに、底知れぬ緑の瞳が怖くて目を眇めた。
「何故、彼女を狙う」
男はそれでも、聞こえない振りをして沈黙を続ける。
黙っていることが、これほど苦痛だとは思わなかった。ただ見つめられているだけなのに、冷や汗が止まらない。
「少し、痛い目を見ないと吐かないんじゃないか?」
仲間の一人が指の関節を鳴らし一歩、前に出た。
しかし、ベリルは小さく手を挙げて仲間を制止する。
「組織については、またあとで質問するとしよう」
立ち上がり、彼らを車に積んでくれと指示をした。