──オーストラリア

 太陽が赤く大地を照らし出す頃、車を走らせているベリルの耳に聞き慣れた音が微かに響く。それは次第に音量を増し、近づいてきている事が窺えた。

「アレウス」

「ん?」

 ベリルがコンコンとフロントドアのガラスを指で軽くノックする様子を見て、外に目を向ける。

「あれは──」

 アレウスは見えたものに驚いて窓を勢いよく開いた。

「飛行機だぞ!」

 目を細めて詳細を計るアレウスの耳に別の音が聞こえてくる。反対側からも飛行機が向かってきていた。

「本気を出してきたな」

 前方に見える飛行機にベリルは眉を寄せた。

「取り囲むつもりだろう」

 小型の輸送機だろうか、前方の黒い機体の横っ腹にある扉がスライドし、五人ほどパラシュートを使って降下している。