「いや、待てよ」

 機密を漏らさないためにあえて死亡としていたら、どうだろう。あり得ない話じゃない。国の保身のために当然の処置だといえる。

 こいつはノースカロライナ出身だ。A国との接点がどこに──

「こいつには師匠がいたな」

 孤児だったこいつを保護者として引き取ったこの男なら、何か知っているかもしれない。元傭兵だというこいつも胡散臭い。

 キリアは端末を取り出すと、どこかにかけ始めた。

「レスター、捕まえてきてほしい奴がいる。口がきければいい」

 そうして、ある程度の説明を終えて通話を切る。

 ここまでして徒労に終わるかもしれない。しかし、確かめる方法はこれしかない。違ったなら、カイルという奴をじっくり殺せば多少の憂さ晴らしにはなるだろう。

「実験No.6666(フォーシクス)。俗称キメラ──か」

 キリアはディスプレイを見つめてあごをさすった。その目には狂気にも似た喜びが浮かんでいる。そして、ちらりとマイクを見やった。