「いいね」

 苦しみに歪む顔はさぞ見ものだろうと想像し、その喜びに喉の奥から笑みを絞り出す。

「今が二十五なら、生まれた年には何があったのかな」

 キリアはふと興味を持ち、二十五年前の出来事を手当たり次第に検索し始めた。

「うん? なんだこれは。A国?」

 A国──正式名称、アルカヴァリュシア・ルセタ──ヨーロッパにある小国だ。主な輸出は科学技術であるが、それも現在では他国との技術差もなくなり、財政は苦しくなる一方となっている。

 内陸にあるため漁業はなく、農業でまかなえるほどの広大な土地もない。国土には森林が多く、その街並みはイタリアとよく似ている。

 つまりは、終わりに近い弱小国家である。

 その森の中に建てられていたらしい遺伝子操作研究所に、キリアの目が()まった。