──朝、ベリルは車を走らせながら思案していた。

 これ以上、単独での戦闘は少々無理がある。相手も、こちらの行動に対応出来る頃合いだろう。組織的な集団である事は、これまでで十分に理解出来ている。

「さて。どうしたものか」

 携帯端末を取り出し、車のカーナビにある中央のくぼみに差し込んだ。

「なんですの?」

 助手席のミレアと後部座席にいるアレウスは、見慣れない行動に怪訝な表情を浮かべた。

 昨今、スマートフォンを設置する機器が取り付けられている車が増えているものの、全体から見れば未だ少数だ。

「ジェイク」

 ベリルが発すると端末から呼び出し音が流れる。二人はそれにギョッとした。

「音声認識だよ」

 驚く二人に説明する。車内は静かという訳でもないのに、人の声を認識出来る機能にアレウスは感心した。

 しばらくして呼び出し音が鳴りやむ。