──朝になり、ゆっくりと目を覚ましたミレアは大きく伸びをする。

 こんなにぐっすり眠れたのはいつ振りだろうかと、消えているたき火の跡を寝ぼけ眼でぼんやりと見つめた。

「おはよう」

「あ。おはようございます」

 ベリルの声にはたと我に返り、慌てて挨拶を返す。顔が近くて心臓が飛び出るかと思ったけれど、肩を借りて寝たのだから当たり前の距離だ。

 ベリルはミレアが目覚めた事を確認し、ゆっくり立ち上がって移動の準備を始めた。

「ミレア様。おはようございます」

 移動の準備を手伝いながらアレウスが顔を向ける。

「おはよう。アレウス」

 少女はベリルの後ろ姿を眺めつつ、あれからずっと側にいてくれたのかなと申し訳ない気持ちになった。

 一度も起きなかったところをみると、一晩中じっとしてくれていたのだろうか。自分は重いとは思わないが、腕は痺れなかっただろうか。

 ミレアは毛布をたたみ、トタタとベリルに駆け寄る。

「すみません」

「ん?」

 それだけ発してまた足早に離れていくミレアに、どうして謝られたのか解らないベリルは小首をかしげた。





†††
-----

盛挙(せいきょ):盛大な事業。雄大な計画。 
 胎動(たいどう):(2)内面の新しい動き。