「俺はこの土地を知らない。必死でミレア様を追いかけたが、俺だけではどうすることも出来なかっただろう」

 あれほどベリルを警戒していたのに、この変わり様はどうしたことだ。

 なんの警戒心も示さず安心しきった顔で眠っているミレアを見て、アレウスはギスギスしている自分がなんだか大人げないようにも思え、今の気持ちを素直に口にした。

「お前一人に全て頼るのは間違っていると思うが、俺たちにはどうしていいか解らない」

 このまま郷に帰っても、再び連れ去られるかもしれない。生涯にわたり、ミレア様を守り切れる自信がない。

「そう思うなら、情報を頂きたいのだがね」

「すまない。それだけは、出来ない」

 悔しげに答える。

 話したくても話せない。そう言っているようにも受け取れた。ベリルは仕方がないと溜息を吐き、どのみちやることは一つだと目を閉じた。