「実は」

「ん」

「郷を出てから、よく眠れてはいないのです」

 追われ、捕らわれる恐怖からミレアはまともに眠ることが出来ないでいた。

「そうか」

 ベリルはそれに労りも慰める事もなく、ひと言それだけを発すると再び無言になる。少女は炎の色に染まる青年の横顔を見つめた。

 エメラルドの瞳は、炎の中にあってその輝きをなくさない。

「あなたは──不思議な人です」

「そうかね?」

 とぼけるように肩をすくめる。

「兵士、なのでしょう? なのに、あなたからはそれを感じません」

 ミレアの瞳は炎の色も重なってより一層、赤くベリルを見上げていた。