──朝

 ベリルは車の鼻先を相手のいるに向け、荷台には乗らず双眼鏡を覗き込む。そのとき、微かに聞き覚えのある音が耳に響いた。

 この音は、ヘリのローターか。

「アレウス」

 隣で同じく一キロ先の敵を見ていたアレウスに上空を示す。

「ヘリだ」

 遠くの空に見える小さな点に目を(すが)めて答えた。

「厄介な」

 ベリルは煩わしげに口の中で舌打ちをすると、トラックの荷台に飛び乗りビニールシートから長物(ながもの)を取り出した。

 ドン! と乱暴に二脚を車の屋根(ルーフ)に据え、スコープを覗き込む。

「うお」

 アレウスはそのデカブツに、小さく声を上げた。

 目の前にどっかりと横たわる武器に言葉がない。こいつ、とんでもないものを持ってやがる。

 全長一メートル四十センチを越える対物狙撃銃(アンチマテリアルライフル)、バレットM82だ。

 軽装甲車両やヘリコプターを撃つためのライフルで、重量は十二キログラムを優に超える。