──数時間ほど走ったが景色にさほど変化はない。

「つけているか」

「ん?」

 ベリルの問いかけに、アレウスは窓を開けて後方を見やる。

「一キロほど離れてついてきている」

「そうか」

 バックミラーに目をやると、ミレアが不安げに落ち着かない様子だ。それにさしたる関心を示さず前方に向き直る。

 そうして暗くなるまで走り続け、暗闇になる前に野営の準備をして眠りに就く。相手は相変わらず一定の距離を保ち、ベリルたちを監視していた。

 昼間に一人撃ち殺し、二人となった訳だが──さて、どうやって人員を補充するだろうか。それによって相手の規模をぼんやりと計る事が出来る。

 狙われている理由が解れば、組織を割り出せる要素にもなる。だけれどあの二人は、どんな訊き方をしてもまったく口を開こうとしない。その徹底ぶりには感服すら覚える。

「誘導にすらひっかからないというのもな」

 あまりにもの(かたく)なな態度に、もう知ったことかと放棄もしたくなる。それが出来ないことも、ベリルには充分解っていた。