「そうなのですか」

 殺風景な景色にミレアは少し残念そうな顔をしたが、それでも広大な大地に目を輝かせた。

 中国も大陸なのだから広いだろうにと肩をすくめる。とはいえ、山奥で身を潜めるように暮らしていればその広さを実感するのは難しいかもしれない。

 自然環境が過酷なオーストラリアは実に、四十パーセントが非居住地域(アネクメネ)だ。

 河川から海に流入する栄養分も乏しく、広大な排他的経済水域にも関わらず漁業生産は極めて少ないとされる。

 昨今では地球温暖化の影響も重なり、さらに過酷な地となっている。

 ヨーロッパの入植者が持ち込んだ外来種により、多くの在来種が被害に遭った。

 それでも──この地には未だ太古からの精霊が宿っている。そして、過酷な環境下でも諦めなかった入植者たちの血と汗も染みこんでいる。

 それらを愛した師の大地をベリルもまた、気に入っていた。



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凄艶(せいえん):ぞっとするほどあでやかなさま。