撥水加工(はっすいかこう)が施された深緑のシートで覆われているため、それが何なのかは解らないものの、金属の細長い大きなものだということはなんとなく解った。

「いけるか」

 荷物を積み終わり、二人に旅の始まりを告げる。

 元より、荷物はこの身ひとつの二人には心の準備しかない。アレウスはこれからの不安を胸に、ミレアは知らない場所への好奇心を胸に古びた車に乗り込む。

「後部座席の方が良いのだがね」

 助手席に腰を落としたミレアに眉を寄せる。

 特別仕様の車ではあるものの、がっつり顔が見える席を選ばれては守りづらい。

「景色を目に焼き付けておきたいのです」

「ミレア様がそうおっしゃるのだ」

 親馬鹿かお前はと、あまりのくだらなさに手で顔を覆った。こいつらは自分たちの現状をちゃんと把握出来ているのか。

 どちらかといえば妹のように思っているのかもしれないが、甘やかすにも時と場合を考えてもらいたいものだ。

 王族に会った事があるベリルでも、この二人の扱いには苦労していた。