「き、貴様は、悪魔だ」

 セラネアは息も絶え絶えに言い放ち、ベリルを指差した。

 一瞬にして、手にした全てが(つい)えたのだ。そんな輩を、悪魔と呼ばずしてなんとする。

 組織を大きくし、情報網を張り巡らせてようやく統率者の一族を見つける事が出来たというのに。たった一人の、なんの関係もない人間に阻止され、己の命すら絶えようとしている。

「悪魔め」

 ベリルは憎らしげに見上げる視線に動じることもなく、ゆるりと歩み寄り片膝を突いた。

「今頃、気付いたのか」

 緩んだ口元に目だけが笑っていない。セラネアは初めてベリルに恐怖した。

 硬質で冷たい微笑みは優美に、それでいて、えぐるようにセラネアの心を突き抜ける。間違った相手を敵にしていたのだと、ようやく今になってひしひしと感じていた。

 その名──ベリル・レジデントには、隠された意味がある。