「我は、間違っていた。キリアではなく、お前を魅了していれば、永遠の命を手にしていたものを」

 セラネアは大量に流れた血液のせいで意識をふらつかせながらも、ベリルに血まみれの手を伸ばした。

「何を言っても無駄か」

 眉を寄せて小さく溜息を吐き出すと、未だ力の抜けているミレアに手を差し出す。

「立てるか」

「はい」

 今までと少しも変わらない面差しに、少女は目を泳がせる。自分がしでかした罪を思い、その恐怖に体から熱が引いていく。

「お前は自由だ」

 もう狙われる事はない。

 ミレアにゆっくりと頭を振り、これからの事を考えろと笑みを見せた。

「ベリル──」

 もう何も言えず涙を拭う彼女の背中を優しく二度叩き、そうしてベリルはヘッドセットを拾い上げて右耳に装着した。