セラネアは、足下に投げ飛ばされてきたベリルを冷たく見下ろす。ことごとく邪魔をしてきた相手だが、こうなっては虫けらでしかない。

「ベリ、ル」

 首の締め付けに苦しみながらも、少女はベリルに手を伸ばす。彼の命が消えかかっている。

「だめ」

 死んではだめ。

 やっと、自由になれた人なのに。これから、多くの者を助けられる人なのに、わたしのせいで──

「そこで見ているがいい。我はいま、不死を得るのだ」

「……不死?」

 朦朧(もうろう)とする意識のなか、セラネアの言葉に目を開いた。

「統率者に代々、受け継がれる力。それは、不老不死を与えるものだ」

「ああ」

 そうか。だから、己の命さえも引き替えにしようとしたのかと抱えていた少女の苦悩をようやく理解し瞼を降ろす。