「ベリル! 貴様!」

「かかってこいよ」

 次はお前だと挑発する。

 ベリルが倒れたいま、キリアに驚異となる者はいない。アレウスは余裕の笑みを浮かべる男を忌々しく睨みつけた。

 こいつだけは許さない。

 ふと、視界に入ったナイフを拾い上げる。このナイフはベリルのものだ。なんとしっくりとした握りなのだろう。芸術性の高いナイフは、アレウスの手にもよく馴染んだ。

 これなら、闘える。ベリルのようにはやり合えなくとも、せめて一矢(いっし)報いたい。

「キリアぁー!」

 鼻につく笑みを見せ続けるキリアにナイフを構え、その懐に飛び込んだ。