「今更そんな遠い昔のことなど、どうでもよい。我は今、その統率者が大事に抱えていた力を手にするだけだ」

「やめろ!」

「おお。セラネア様が神となるのだ」

 キリアは恍惚とした眼差しでセラネアを見つめる。

 これほどまでに人を変えてしまうセラネアの力にアレウスは驚愕し、あの力はミレア様には利かないのだとも気付いた。

「ぐっ──う」

「動くな。傷が……」

 あふれ出る血に胸を押さえて立ち上がるベリルに声を震わせる。

「アレウス」

 ベリルは血で喉を詰まらせつつ、動揺しているアレウスの注意を自分に向けさせた。

「私を見ろ」

「ベリル?」