Marvelous mercenary-マーヴェラス・マーセナリィ-

「貴様」

「勝つためには、何でも使えってね」

 ようやく見たかった表情に満足したのか、握ったナイフに力を込める。

「がっ──あ!?」

 痛みで見開かれたベリルの目に歓喜して、死にゆく相手の額にキスを与える。そうして沈めたナイフを引き抜き、ぼたぼたと流れ落ちる鮮血に酔いしれた。

「ああ。なんということを」

 セラネアは慈悲もなく、顔を覆い嘆くミレアのその腕をぐいと引く。

「お前のために命を落としたのだ。さあ、その力を我に示せ。さすれば、お前の命だけは助けてやろう」

「わたしだけが助かるのなら、意味がありません」

 涙で潤む目でキリリと男を見据える。そんな少女をあざ笑うように口元を歪めた。

「ならば。お前のために命を投げ打ったあやつは、無駄死にであったな」

 その言葉に、ミレアはビクリと体を強ばらせた。