奥歯をギリギリと噛みしめて震えるほどの怒りに目を血走らせ、ベリルにナイフを突きつける。
それは当然のように交わされたが、ニヤリと口の端を吊り上げてすいと横に移動した。
目の前にいたのは──
「しまっ──!?」
セラネアの瞳がベリルを捉える。途端に自分の意思では指一本も動かせなくなった。
「ベリル!」
駆け寄ろうとしたミレアの邪魔をするように、セラネアは立ちふさがる。
「だめ!」
ミレアは、男の体越しにベリルに近づくキリアの姿が見えて血の気が引いた。これ以上、彼を傷つけないで。
「残念だったなぁ」
キリアはベリルに顔を近づけて勝ち誇ったように口元を歪ませ、ナイフの先端をぴたりと胸に当てた。



