「たかが傭兵が、よくもここまで我を(わずら)わせてくれた」

 セラネアは艶やかに飾り付けられたローブを整え、俗悪な笑みでベリルを見下した。なるほど、組織をここまでにした自信が窺える。

「セラネア様は、選ばれた者なのだ」

 キリアは声高に、さも誇らしげに胸を張る。けれども男の瞳から放たれている感情は、主人を得た騎士のそれではなく、突き進む狂信的な眼差しにベリルは思えた。

「そんな性格ではないと思っていたのだが」

 ベリルの予想は大抵は当たっているのだが今回はかなり外れたのか、やや思案するような仕草をし無表情につぶやいた。

「奴に魅了されたんだろう。あの目には、何者をも従わせる力がある」

「ふむ?」

 チャーム・アイというやつか。

 アレウスが動けなくなった事と、キリアの変貌振りにそう納得付けた。