大理石の壁と深紅の絨毯、壁際に置かれたアンティークの長机には燭台が並べられ、上座には玉座が一つ設置されていた。
この部屋を造れと命じた奴はかなりの悪趣味に違いない。
室内をゆっくり見回す暇もなく、中央にミレアとキリアを確認し二人は見慣れない男をいぶかしげに見やった。
「ようこそ」
キリアは嬉しそうに両手を広げて歓迎の意を示す。
いるなら何故、迎撃しなかったのか。ベリルはそれに強い疑問を抱く。
そのキリアの背後にいる男は初めて見るが、顔だけは知っている。
こいつはセラネアだ。で、あるならば──彼女の能力を知り、拉致を命じたのはボスのセラネアなのか。
「ミレア様!」
「おっと」
少女に駆け寄ろうとしたアレウスの前に、キリアは相変わらずのにやけた笑みを浮かべて割って入る。