「広いな」

 もっと大勢で攻撃されるのかと思っていた。

「私が予想したのは兵士の数だけだ」

 非戦闘員である人間を含めると百五十人は基地内にいるだろう。

 重要なのは基地の維持と管理、いつでも動ける兵士を持ち続けること。使い捨ての兵士ばかりでは組織を大きくすることは難しい。

「それだけの求心力も幹部には必要とされる」

「犯罪組織でもちゃんとしていなきゃだめなのか」

「犯罪組織だからこそ、徹底されている部分もある」

 思っていたよりも複雑であることを聞きながら、ようやく感じ取れたミレアの気配を辿る。

 基地内に入った刹那にミレアの悲痛な感情が脳内に飛び込んできた。

 痛めつけられたものとは異なり、まだ無事だと知って安堵したものの、彼女の狼狽した意識にアレウスもまごついた。

「ミレア様に一体、何が起こっているんだ」

 こんな感情を受け取るのは初めてだ。

 命の危険は感じられないとはいえ、早くお救いしなければと逸る心を抑えた。