「セラネア様、あのですね。ここが辿られていたらしく、彼女を救おうとする者がすぐそこまで来ています」

 怒らせないように、なるべく丁寧に、ごますりよろしく下卑た笑みを貼り付ける。

 この基地の全ての権限を与えてくれれば、確実に勝てるのだ。ボスが見ているなら尚更、派手にしなければならない。

 のし上がるための功績を逃したくない。

「なんだと?」

 機嫌の良かった男の眉間に深いしわが刻まれる。

「ベリルが?」

 少女は思わず顔をほころばせた。途端に目尻を吊り上げたセラネアという男にハッとする。

「ベリル──あの男か。貴様、殺せなかったのか」

 案の定、セラネアは強い怒りを示した。当然と言えば当然だ。