黒いTシャツに前開きの長袖シャツを合わせ、暗めのソフトデニムパンツという、目立つような格好でもなく、それでいて地味というわけでもない。

 落ち着いた雰囲気をまとう青年には、よく似合う服装ともいえる。

 百七十四センチの身長と細身の体は、道行く人々の中にあって小さく感じられた。

 ダーウィンは乾季と雨季を持つ熱帯気候帯にあり、季節は日本と真逆になる。五月から九月までは乾季で六月の今の季節は涼しい時期だ。

 青年はふと、好奇心にかられて路地裏に踏み込む。細い道というものは、どうしてこうも追求心をそそるのか。

 彼が歩いている場所は観光地という訳ではなく、北に数十分も歩けば港が広がる住宅地だ。