「興味深い話だ」

何艘(なんそう)もの船で脱出したため途中で皆、散り散りになり、統率者とそれを護る一族の乗った船は、中国大陸に流れ着いたと伝えられている」

 当時、辿り着いたその地にどのくらい人間がいたのかは解らない。彼らの持つ能力(ちから)と経緯を思えば、数少ない住人からも遠ざかっていた事は明白だろう。

 そのうちに人が増え、一族は廃れる事もなく小さな繁栄を続けながらも逃げるように住処を転々とし、やがて山奥に身を潜めるようになった。

 それでもその生活は質素というだけに留まっているのは、中国という大陸によるものが大きいのかもしれない。

 あまりの広大さに、未だ全容の把握は出来ていない。

 少しくらいの物の移動など気付くはずもなく、現在に至ってもなお、知られざる部族がいる可能性すら拭えない。

 それほどに巨大な大地といえる。