どうしていいか解らずに、このオーストラリアにたどり着いた。その矢先、追っ手に見つかり逃げていたところだった。

「あなたに出会えたことは、きっと運命です」

「運命ねえ」

 それをすんなりと受け入れて、命懸けで守る対象になる訳じゃない。

「要請なら報酬は頂く」

「当然です」

「我々は恩を知らない(やから)ではない」

 それならばと多少の納得はした。しかし、全てに納得はしていない。

 山奥で暮らしている一族に報酬など払えるのかね。こちらは親しい人間でもない者を命を賭けて守らなければならないのだから、小遣い程度で雇われても困る。

 衝撃的な出会いではあったものの、単純にそれを運命だと言い切る事は出来ない。

 どうにもこれは、ただ働きの予感がする。すぐさまキャンセルしたい気分だ。とはいえ、車から放り出すような行為は自分には出来そうにもない。

「仕方がない」

 溜息交じりにつぶやき、我ながら損な性格だよと自分に呆れて肩をすくめた。





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