──それから数時間後、急ぐように走らせたベリルたちの車は予定時間より早く到着した。

 すでに夜は明け、太陽が空を明るく染め始めている。

「きつく頼む」

 車から降りて仲間を待つあいだ、バンダナをアレウスに手渡し右腕を示した。

「いいのか?」

 傷口の上じゃないかと指定された箇所をいぶかしげに見やる。

「包帯だけでは心許(こころもと)ない」

 バンダナを受け取り、ベリルの右腕にきつく縛り付けた。痛みで少し声を漏らし、確認するように右腕を回す。

「合流までまだ少しある。お前たちの話を聞かせてはもらえないか」

 アレウスはしばらく目を伏せ、昇り来る太陽の方角に視線を向けた。

「これは言い伝えで、本当かどうかは解らない」

 ベリルは荷台のへりに左腕を乗せ、聞く体勢をとる。

「俺たちの力は、神から授かったものらしい」

「ほう?」

 アレウスは、ベリルが好奇心だけでない事を理解して話を続けた。