どうにも出来ない憤りをぶつけてしまった己を恥じるアレウスを、バックミラーが映し出す。

 ベリルはそれを一瞥し小さく笑みを浮かべる。頭の中では、仲間をどう動かせば勝てるのかを思案していた。

「ベリル」

「うん?」

「もし、ミレア様が力をお使いになったとしても。ミレア様だけは、助けてくれ」

 力を使えば、用無しで殺されるかもしれない。

 しかし俺たちには、そんな力などどうでもいい。ミレア様の一族を護ることこそが、我らの使命なのだから。

「当然だ」

「ありがとう」

 ハンドルを持つ手が微かに震えていることにベリルは気付かない振りをして、武器の確認を続けた。