「急所を避けるのが精一杯だとはね」

 つぶやいて薄く笑う。

 確かに私は経験不足だ、奴の動きに対応しきれなかった。世界は広いのだと、まざまざと見せつけられたよ。

 キリアは私の能力が見たいのだ。そして、圧倒的な戦力の差で徹底的に攻撃し、敗北を認めさせるつもりなのだろう。

 私を懐柔(かいじゅう)できなかったことがよほど悔しいとみえる。

「ベリル。すまなかった」

 アレウスは詰まる声を絞り出した。

「私のせいだ。責められても文句は言えない」

「お前は、よくやってくれていた」

 いっときの感情でベリルを責めるのは間違いだ。これだけの事をしてくれているというのに──。

 自分だけだったなら、助け出す術さえもなかったはずだ。