「そんなに、この女は重要なのか?」

 ミレアを一見(いっけん)し、まあいいけどと肩をすくめる。

 そしてふと、ベリルとの闘いを思い起こして、苦々しく舌打ちした。

「あいつ──」

 本当は、ゆっくりと死んでいく様を眺めてやろうと腕の動脈を狙ったはずだった。

 刺した感触で外したことはすぐに解った。咄嗟とはいえ、あの速度で避けるとは恐ろしいほどの身体能力だ。

 殺すつもりでいたはずなのに、あいつを失うのが惜しくなった。

「これで、最後だ」

 生かしておけば俺の脅威になりかねない。仲間を皆殺しにしても配下に取り込めないのなら、

「勿体ないけど」

 殺すしかない。