アレウスの話から、遙かな昔に沈んだとされる大陸と呼べるほどの大きな島を思い浮かべた。
「その海域にはアトランティスがあったとされているな」

「言い伝えが本当かは解らないが、伝聞師(でんぶんし)からはそう聞いている」

 アトランティスには文字がなかったとも言われているが、なるほど大昔の聖書のように彼ら一族には語り継がれているものか。

「平和に暮らしていたのに」

 ミレアの手が震える。

 中国は広い。政府が全ての部族を把握しきれていないように、ミレアたちの一族もそのなかにあって身を潜めていた。

「突然、何者かがミレア様を連れ去ったのだ。俺はミレア様を助け出すために、そいつらを追った」

 アレウスは苦々しく奥歯を噛みしめる。

「相手が多すぎたか」

 どうにか救い出せはしたが追っ手の目は厳しく、集落に戻ったところでまた連れ去られるのがおちだ。