ウインクして車に乗り込み、通信機に手をかける。ベリルは仲間が持ってきた新しい服を羽織ると、再びイスに腰掛けた。

「必ず救い出す」

 その目に鋭い光が宿る──

 力を持っているというだけで彼女は苦しみ、その命すら断とうとしている。

 アレウスの言葉では、統率者の血筋に必ず現れる力なのだそうだ。その力もまた、たった一度だけものらしい。

 そして、その力は統率者の血筋に一度だけという特別なもので、彼女が死んだからといって、その力が無くなる訳ではない。力は別の血筋に受け継がれる。

 本当に解放されるのは、その力を使ったときだけとなる。

 しかし、統率者の血筋たちはそれを拒んできた。だからこそ、これまで使われずにいた。呪われた力だとし、彼らはその力を良しとは考えていない。

「それ程に、大きな力なのか」

 目を眇め、噛みしめるようにつぶやいた。