麻酔を使わない治療には激しい痛みが伴う。しかしベリルは歯を食いしばりそれに耐え続けた。

「強めに頼む」

「わかった」

「で、どうするんだ」

 戻ってきたジェイクが包帯を巻かれているベリルの腕をちらりと見て問いかける。

「ひとまず、仲間との合流地点に向かう」

 痛み止めを断り、腕を抑えて苦い顔をし立ち上がった。

「彼女を追わなくてもいいのか?」

 念を押すように聞き返すと、ベリルはディスプレイの赤い点を一瞥した。

「今の数では追いついたとしても、勝ち目はない」

 キリアが向かっている先は東──オーストラリアの基地だろう。

 このまま追って、勝てるのならばそうしたい。しかし、敵の拠点であるならその規模を把握していなくとも、こちらの今の戦力では難しいということだけは解る。

「仕方ねえな。早く来るように急かしておくよ」

 いつもの冷静なベリルに安心したのか、ジェイクは口角を吊り上げて応えた。