「傷は?」

 見事に腕を貫いているナイフを眺め、袖を破いて傷口を確認した。

「いいか、抜くぞ」

 突き出た刃先を消毒し、険しい表情を向ける。

「頼む」

 了解を得て覚悟を認め、肩にきつくロープを巻いて血流を抑えると、男はゆっくりナイフに手をかけ柄を強く握る。

「ぐっ──う」

 一気に引き抜かれた瞬間、痛みで小さく唸りを上げて抜き終わった事にホッと肩の力を抜いた。

 男は抜いたナイフを乱暴に車の床に投げ捨て、流れる血をガーゼで拭き取る。

「幸い、太い血管を傷つけてはいないようだ」

 食塩水をたっぷり含ませた布で傷口を拭い、瞬間接着剤が入っている容器に似た形状のものを手に取って、糸を通した針を用意する。

「痛むが我慢しろよ」

「やってくれ」

 その言葉に、男は躊躇なく傷口に皮膚表面接着剤を注いだ。それが終わると、次に接着剤が乾いた傷口を縫っていく。